2007-05-06

『飛び石、庭先』 -Japanese Traditional House②

 白く、白く、全てを掻き消すように強い日差しは家の庭に注ぎ込む。何するでもなく、私は縁側に腰掛けている。じーん、という蝉の音。脳の奥に、後ろの首筋に鈍く響き、庭全体に満ちた光は古く黒く変色した木造の家屋の柱や土壁を白く縁取る。

 僕は腰を上げて庭の隅にある蛇口に向かった。サンダルがコトリ、コトリと音を立てる。蛇口に向かう道には飛び石が据えてあり、露出した土の地面を歩かずに済む。私は蛇口の傍に転がるトタン製のジ
ョウロに水を満たした。ジョウロの注ぎ口迄上がった水面は揺れて、眩い光の波が反射している。

「暑い・・・・。」

 私は思ったのだった。私は後ろ向きのままで、飛び石を伝って縁側へ戻る。一歩戻るたびに、直前ま
で足を乗せていた飛び石に手に持つジョウロで水を注いだ。さあさ、と音を立てて水は石を濡らす。白く乾いた石は初めは降り始めの雨のように黒く湿り、次第に流れ伝う水滴の軌跡を現して、やがては石を黒く艶やかに湿らした。ジョウロを傾ける時、その時に立つ石の香。

 
 白く、白く全てを掻き消して、次いで私自身を掻き消すほどの強い日差しは、今しがた私が濡らした飛び石を、見る間に白く乾かした。滲むように濡れた陰りを浮かして消している日差しも、数刻経つと橙色のニュアンスを帯びるだろう。

 僕は乾く度に、飽きずに石を濡らして、石を渡る。