2007-04-01

嵐の夜に

 風が激しく木の窓を打ち付けた。窓の端には雨がにじみ出て黒くなる。この状態では、眠ろうにも容易には眠れまい。僕は緩んだ頭を起こして、笛を手に取る。そして風に紛れて笛を吹く。曲名は無い。只吹く。 窓の音に合間に、何処からか遠く、丘の遥か下の方からは何か軋む様な叫び声が聞こえてくる。あれは人だろうか、犬だろうか。スピーカーから微かに漏れ聞こえてくるのは、サティの「サラバンド」だった。ちらちらと時折明滅する蛍光灯は、もう換え時だろう、起き掛けの鈍い頭に優しい。 僕は途切れ途切れに、笛を吹く。騒音に紛れて、吹く。途切れて、また思い出したように、滑らかに、また、朴訥に。
 

 不意に、風が止んだ。止んで、僕の呼吸音が残った。スピーカーからは、静かにホワイト・ノイズが流れる。僕は、布団の上に笛を投げ出した。耳を澄ますと、何処からか、三線の音色が聞こえる。しばらく横になり、その音を聞き取ろうとした。しかし、その音も止み。窓の外を見ると、風は緩く木々を揺らし、暗い闇はなお暗い。
 そして後は、雨がしとしと、地面を濡らす音だけ残る。

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