
「汐干狩りにでも」と朝のラジヲに促され、その気になった僕は、セルを回して程近い砂浜に向かう。携帯のプレイヤーは無いが、自身が楽器なので構うまい。十年位前の流行らない歌を口ずさむと、僕は夕餉の味噌汁を連想した。風が湿り気を帯び、海岸は真近のようだ。灰色の空。
「緑藻に カワズ絡みて 冬の月」
と、詠った詩人か嘗て居たかどうかは定かではないが、海岸に近い防風林の松のやや左上に、白けた月がぽっかり浮かぶ。砂浜のある場所は、海岸沿いの公園で、その中でも随分と奥まった処だ。行く道すがらには、季節外れの炭酸水がある自動販売機、或いはノドグロを釣り上げてはしゃぐ釣り人、また或いは壊れかけのラジヲ(レディオ?)に耳をぴったりと寄せて演歌を聞き入るランニングの老人、などが居るに違いない。しかし、そんなものは居るわけも無く、僕は砂浜目指してニスが厚く塗られた木製のボード・ウォークの上を、海岸沿いに歩いた。僕の中のラジヲは、すでに洋楽のチャンネルに切り替わっている。
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音、音、大地を伝う音、あれは大地そのものの響きだ。錆びた鉄の棒から、始めは高く、海を伝い、大地を通じて僕のつま先を震わすあのリズムは、大地そのもののリズムだった。それは、大地を通じて次第に世界に広がり、やがては大気圏のオゾンを突き抜けて、宇宙に至る。

Photo & Fancy: M.Y
Camera: Kyocera WX300k
Retouch software: Picasa2
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